笈摺おいずり)” の例文
と二人が声を揃えて怒鳴り付けるうちに一作が、女の襟首へ手をかけると、古びた笈摺おいずり背縫せぬい脇縫わきぬいが、同時にビリビリと引離れかかった。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今度は笈摺おいずりに向って何やら頻りに呪文のようなことをしょうしながら珠数をじゃら/\み鳴らしています。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
いずれも心岳から前山に連る尾根上の小平地天狗平に於て相会し、それより心岳の登りとなり、笈摺おいずり貝摺かいずりなどいう峻坂を鉄鎖に依りて攀じ上り山頂に至るのである。
中に荒縄の太いので、笈摺おいずりめかいて、ともした角行燈かくあんどんになったのは天狗である。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
笈摺おいずりをかけて涼しやなぎの枝 自笑
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
その反対の角隅には、道者の笈摺おいずりを枕元に据えて、人一人が布団を冠って臥ておりました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
白木綿に朱印をベタベタとした巡礼の笈摺おいずりを素肌に引っかけて、腰から下に色々ボロ布片きれを継合わせた垢黒あかぐろい、大きな風呂敷ようのものを腰巻のように捲付まきつけている恰好を見ると
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)