竦然ぞっ)” の例文
帳場格子の中に頬杖突いて凝乎じっとこちらのほうを眺めております親父の顔なぞが、竦然ぞっとするほど青めた恐ろしい人相に映りましたり
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
多くの者がチチコフの立場にいたく同情して、そのような多人数の農奴を移住させる苦労に竦然ぞっとした。
がその途端にドンドンドンと今度は烈しく戸を叩いて、まさかと思った親父がほんとうに帰って来た時には私もまったく竦然ぞっとしました。
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
そして竦然ぞっとして、心が寒くなりました。私には自分が国家の外交官であるという身の上すら、もはや考えることができなくなりました。
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
そして薔薇ばらに埋もれたスパセニアなぞの、五、六枚の写真を撮りましたが、私はその後二年ばかりたって竦然ぞっとするような事件のために
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
場合が場合だけに思わず竦然ぞっとして振り向いたが、そこには君太郎が大きなに涙を一杯溜めて、訴えるように私を振り仰いでいたのであった。
生不動 (新字新仮名) / 橘外男(著)
くびに手をやって、カラアもワイシャツもバリバリとき破りながら、長椅子の上にのた打っているグスタフを見ていると、私も思わず竦然ぞっと身震いがした。
葛根湯 (新字新仮名) / 橘外男(著)
ただ三人ながら例のこの世の人とも思われぬろうのような顔色だけが再び意気地なくも私を竦然ぞっとさせたが……
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
冷たい風がほおでて、竦然ぞっ襟元えりもとから、冷水ひやみずでもブチカケられたように……スウッと誰かが入って来たと思った瞬間、こらえ怺えていた恐怖が一時に爆発して
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
と、妹娘の脚の下に、長々とうずくまっている巨大な犬を眺めながら、私は今更のように竦然ぞっとしました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
こうも人相が変るものか! と竦然ぞっとせんばかり、髪ふり乱して夜叉やしゃのような形相であった。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
私は竦然ぞっと総毛立ちながら、思わず眼を閉じて二、三度頭を振りました。
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
物怪もののけに襲われた気持というのはこれをいうのか、竦然ぞっとして足がすくんで、ただザワザワと全身の毛穴が粟膚あわはだだってきた。逃げるにも逃げられず進むにも進まれぬ気持というのがこれであったろう。
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
思わず私は竦然ぞっとして立ち止まった。
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)