竜燈りゅうとう)” の例文
新字:竜灯
この娘は、茂太郎が竜燈りゅうとうの松にのぼって歌をうたい、それから西に向って走り出した最初の時から見ていて、追わなかった娘であります。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
白張しらはりの提灯ちょうちん竜燈りゅうとうはその中に加わってはいないらしかった。が、金銀の造花の蓮は静かに輿こしの前後にゆらいで行った。……
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
山麓さんろくのそこ、ここからも竜燈りゅうとうのような灯がともりだした。天の星は碧く紫にきらめいているが、竜燈は赤く華やかだ。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
何月何日の何時までに竜燈りゅうとうや造花を持って来いと云われた精神生活上の葬儀社である。——保吉はバットをくわえたまま、だんだん憂鬱になりはじめた。……
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
よく見ると、燈夜とうやに街をかついで歩く、あの大きな竜燈りゅうとうである。長さはおよそ四五間もあろうか。竹で造った骨組みの上へ紙を張って、それに青と赤との画の具で、華やかな彩色が施してある。
首が落ちた話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)