立聴たちぎき)” の例文
赤熊のこの容態では、成程立聴たちぎきをする隠れ場所に、見世物小屋を選ばねばならなかったろう、と思うほど、薄気味の悪い、その見世物は、人間の顔のむく犬であった。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あんまり大きな声をなすってもしやお代さんが立聴たちぎきしているといけませんよ。どうも先刻さっきから門の外を
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
その頃師の坪内逍遙氏などと一緒に、高山樗牛ちよぎうの美的生活論に反抗の声を揚げてゐた氏は、その高山氏に立聴たちぎきされるのを気遣ひでもするやうに、そつと声を低めて
道でき合っても、女は自己の競争者として外の女を見ると、或る哲学者は云った。汁椀の中へ親指を衝っ込む山出しの女でも、美しいお玉を気にして、立聴たちぎきをしていたものと見える。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
立聴たちぎきをすると
そして他人ひと立聴たちぎきでもされるのを気遣ふやうに、幾らか声を落して言つた。