いわあな)” の例文
けれどいわあなの口には、彼女の力ぐらいでは、動きそうもない大きな岩が、三つ四つ積み重ねてあり、出入りを封鎖してあるのだった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御存じでしょうか。——かの山と雲の棧道かけじ騾馬らばは霧の中に道を求め、いわあなには年経し竜のたぐい棲む……
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ばばは、いわあなから飛び出ると、いきなりお通の襟がみへ跳びかかって行った。この世へ生きて出直した目的の第一がそれであったように。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、その幻覚が、幻覚でなく、実際に誰かいわあなの外へ近づいて来たので、ばばは、途端に気がゆるんで、ああ、と失心してしまったのではなかろうか。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じゃくとしたいわあな、その前の荒れ果てた、一宇いちうの堂、昔ながらである、何もかも、ここだけは変っていない。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)