稲荷町いなりちょう)” の例文
住居というのは、やはり以前のどぶだなの近くと見えます。三味線堀しゃみせんぼりに沿ってあれから、稲荷町いなりちょうの方角へ足を向けて行くと
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれはあから顔の小ぶとりにふとった男で、左の眉のはずれに疱瘡ほうそうの痕が二つばかり大きく残っているのが眼についた。彼は下谷したや稲荷町いなりちょうに住んでいる富蔵と名乗った。
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ある段か、お前さん。こういうては何じゃけれど、田町の剃刀研、わしは広徳寺前を右へ寄って、稲荷町いなりちょうの鏡研、自分達が早や変化へんげたぐいじゃ、へへへへへ。」と薄笑うすわらい
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
稲荷町いなりちょうでした」
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
すぐに下谷稲荷町いなりちょうの女房の里方へ運んで、今夜はそこで内々の通夜つやをするらしく、三河屋の家内はみな下谷へ出て行って、亭主の清吉ひとりが留守番をしているとの事であった。
お直の宿は下谷したや稲荷町いなりちょうだというから、ともかくも尋ねて行ってみろよ
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)