祖母様ばあさま)” の例文
故郷の家で、お祖母様ばあさまのお部屋に、錦絵にしきえ屏風びょうぶがあった。その絵に、どこの神社であったか知らぬが、こんな瑞垣たまがきがあったと思う。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
北海道の奥には、たった一人、年老としとったお祖母様ばあさまがいらっしゃるそうですが、あまり遠過ぎて、何分急場の役には立ちません。
向日葵の眼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
祖母がなくなつてから私どもはそれを お祖母様ばあさまの栗 と名づけて大切にしてたが、この節では三本ながら立派な木になつて
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
石橋に近い小さな家に、早くお国から出て来られたお父様とお兄様(長兄)とが住んでおいでのところへ、お祖母様ばあさま、お母様に連れられて、お兄さん(次兄)と私とが来たのでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
ぼくの坐った卓子テエブルは、沢村、松山、虎さんとぼくの四人で、接待して下さる邦人のほうは、立派な御主人夫妻と上品なお祖母様ばあさま、それに二十一になる美しいお嬢さんの御一家でした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「あれ、お祖母様ばあさまにも失礼な、どうしたらいでしょう。……それに、御近所の方、おかみさんたちが多勢、井戸端にも、格子外にも、勝手口にも、そうしてあの、花嫁、花嫁。……」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
子供の時お祖母様ばあさまから聞いた話で、自由自在に空を飛んだり水にもぐったりするというのです。けれどもそれはただ話に聞いただけで、いくら彼が学者でも、まだ魔法だけは知らないのでした。
魔法探し (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ある日のこと私はお蕙ちやんがお祖母様ばあさまにつれられ学校へはひつてくるのを見て今さらのやうに胸をときめかせた。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
此上このうえ寂しいあき屋敷にいるより、思い切って、北海道の奥の年老としとったお祖母様ばあさまの許へ行こう、麗子は悲しくもう決心して、そっとやしきを抜け出し、上野停車場へ行こうとして居るところだったのです。
向日葵の眼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「ええ。坊ちゃまのお祖母様ばあさまがいらっしゃるんですよ。」
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「お土産みやげをね」と、祖母様ばあさまが目送されます。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
「あの、お祖母様ばあさま……お祖母様。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)