石州せきしゅう)” の例文
榊原さかきばらの軍勢が芸州口から広島へ退いたとか、昨日は長州方の奇兵隊が石州せきしゅう口の浜田にあらわれたとか、そういうことを伝え聞く空気の中にあって
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
石州せきしゅう者の田中太七というは、俗にいう稲荷下ろしにて、女房おきぬとともに、本年の四月ごろより神戸へ来たり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
よく描く蘆雁あしかりの模様は古くから伝わるもので、おそらく仕事は石州せきしゅうの脈を引くものでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
森の家は、石州せきしゅう津和野の城主亀井家に代々仕えた典医でした。亀井家は元和げんな三年に津和野に封ぜられてから十二代になり、森は慶安けいあんから天保てんぽう年間までで十一代になりました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
石州せきしゅうには人狐はないが、山口県に隣接しているために犬神の迷信が伝わっている。また、広島県にも接近しているから、トウビョウや外道げどうの迷信もいくぶんかある。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
茅葺かやぶきには様々な美しいのがあるし、瓦葺かわらぶきでも石州せきしゅう窯場かまばの赤屋根の如きは忘れられぬものではあるが、形の立派さではこの石屋根に比肩するものは他にあるまい。支那の強ささえ聯想れんそうされる。
野州の石屋根 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
出雲人は怜悧れいり、石見人は剛直ごうちょく、こう古書にも書いてあるという、同じ県下の国ではあるが、自然も人間も異なると見える、車が波根を過ぎて田儀に進めば国境である、見れば赤瓦あかがわら石州せきしゅうは早くも終り
雲石紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)