のぞ)” の例文
鳥巣庵の窓から余をのぞいて居た女の影と云い、鳥巣庵が急に塞った所と云い、それこれを考え合わすと何だか偶然ではなさそうにも思われる。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
其度毎そのたびごとに渦を巻いたり白い泡を立てたりして、矢のようにはしる川がちょいちょい脚の下にのぞまれる。峡勢窄迫さっぱくして、黒部川特有の廊下がそろそろ始まったのだ。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
すたすた帰りかけたが、やがて立ちどまって、橋の上から漫々たる河面の闇をじっとのぞきこんだ。
幻想 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
勿論誰だか分らぬけれどのぞいて居たのは若い婦人らしい、戸を締める途端に、華美な赤い着物が余の目へチラと見えた。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
その真下よりはや上手に当って、四、五丈の瀑が全容をあらわしながら、白く懸っているのがのぞまれた。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
戸には錠が卸りて仲々開かぬ、鍵はお浦が持ち去ったので茲にはない、何にしても秀子の身の上が気遣われるから余は詮方なく階段を上り、丁度お浦がのぞいた通りに
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
五、六町にして少し左の方へ廻ったかと思うと、突当りに五丈瀑と刻まれた二尺許の石の柱が建ち、其近く下に瀑がのぞまれた、多分私が其横を登った瀑であろうと思う。
木曽駒と甲斐駒 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
大窓の大雪渓をのぞみたいという希望は、東に続く前山の峰頭に遮ぎられて駄目であった。対岸の山腹には路らしいものがうねっている、能く見ると何か其上を動いているようだ。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
深い深い子酉川の上流東沢西沢の大森林は、ここに漸くその端緒を開いて、昼も薄暗い青葉の奥から、怪奇と雄大とを極めた子酉川の水が声を揚げて落ち来るのを左手の脚の下にのぞむようになる。
この景勝の地を占めている笹ノ湯の建物が橋の上からのぞまれる。
三国山と苗場山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)