相扶あいたす)” の例文
私は低声こごえで「判りました」と返事した。私をしばろうとした刑事と、同じ味方となって相扶あいたすけ相扶けられながら殺人鬼さつじんきせまってゆくのだ。なんと世の中は面白いことよ。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
実に米国と日本とは商業上の関係においては唇歯しんし相扶あいたすけ、輔車ほしゃ相倚あいよる好兄弟といわざるべからず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
他年煢々けいけい孤立、五洲の内を環顧するに一の同種の国なく一の唇歯輔車しんしほしゃ相倚あいよ相扶あいたすくる者なく、徒らに目前区々の小利をむさぼりて千年不滅の醜名を流さば、あに大東男児無前の羞に非ずや。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「これ患難相扶陣そうふじんだ。今度の争闘は患難だによって、相扶あいたすけよという意味だ」
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その日下谷の家にはわたくしの伯父母とやがてそののちぐべきわたくしの弟貞二郎とその妻と児女三人とが住んでいた。幸にして老幼一家皆つつがなく、相扶あいたすけて難を上野公園に避けたのである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
互に相扶あいたすけ合いまして、二度と再び、只今の欧洲大戦のような大惨事をき起さないように努力致します目的の下に、米国に居住する各国人種によって組織されておるものと承わっております。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)