直談じきだん)” の例文
なるべくは屋敷の名を出したくないと存ずるが、どうでも貴公の手にあまって、手前の直談じきだんでなければらちがあかぬようならば、手前がその人に会ってもよい。
半七捕物帳:42 仮面 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
追い/\都鄙とひが騒がしくなって来るので、父子の間にとかくの浮説が出来ると云うのも直談じきだんがないからである、急ぎ秀次是へ参られ候え、むすぼれぬる氷を春風の解くように
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
地所の事は島原しまばら藩と福澤と直談じきだんすべき性質のものでないから御返答は致さぬ、一切いっさい万事君を東京府に聞けとう調子に構えて居て、むずかしい談判も立消になったのは難有ありがたい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
皆が店をのぞいて、与右衛門さんのおかぶ梅ヶ谷の独相撲ひとりずもうがはじまりだ、と笑う。与右衛門さんは何処までも自己中心である。人が与右衛門さんの地所を世話すれば、世話人は差措さしおいて必直談じきだんに来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「じゃあ、どうも仕方がねえ。俺あこれから加賀屋へ行って、おかみさんに直談じきだんするだ」
半七捕物帳:37 松茸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ようとか、アヽ為ようとか云えば、ドウか長州にいっじかに話をして下さい、又長州ならドウか薩州に行て直談じきだんを頼むと云て、一切の面倒を他に嫁して、此方こっちはドウでも宜いと
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ついに勘定奉行と大学頭と直談じきだんの大事件に及びたるときに、大学頭の申し分に、日本国中文字のことは拙者一人の心得にあり、米は米の字にてよろしとの一言にて、政府中の全権と称する勘定奉行も
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)