盆槍ぼんやり)” の例文
学生生活程気楽なものはないと文句もんく何度なんどかへされた。三四郎は此文句もんくを聞くたびに、自分の寿命もわづか二三年のあひだなのか知らんと、盆槍ぼんやり考へ始めた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何を盆槍ぼんやりしているのだろう。見ると、床の間の上下の戸棚といわず、手文庫の中といわず、書棚といわず、手あたり次第引っ掻きまわされてあったが、これは速水のやったものに違いなかった。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おまえが盆槍ぼんやりで、向うが槍突きなら相子あいこじゃないか。
半七捕物帳:18 槍突き (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼女が服装を改ためて夫の顔をのぞきに来た時、健三は頬杖ほおづえを突いたまま盆槍ぼんやり汚ない庭を眺めていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は普通の服装なりをしてぶらりと表へ出た。なるべく新年の空気の通わない方へ足を向けた。冬木立ふゆこだちと荒たはたけ藁葺わらぶき屋根と細いながれ、そんなものが盆槍ぼんやりした彼の眼にった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)