白骨しらほね)” の例文
白骨しらほね温泉へ行くのださうで沢渡さはんどで下りた。子供も助かつたであらうが自分もほつとした。もどしたものを母親が小さな玩具のバケツへ始末してゐた。
雨の上高地 (新字旧仮名) / 寺田寅彦(著)
「そうさね、どこといってべつだん当てはないのだが、お前のいま言ったその信濃の国の、白骨しらほねというところへでも行ってみようかと思っているのさ」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
十月十五日、私は白骨しらほね温泉の宿屋の作男を案内として先づ燒嶽のツイ麓に在る上高地温泉に向うた。行程四里、道は多く太古からの原始林の中を通じてゐた。
神河内から白骨しらほねへと流れて行く大川筋が、緑の森林の間を見え、隠れになって、のたくって行く、もう前穂高の三角測量標は、遥か眼の下にっちゃられて、小さくなっている。
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
日本アルプスの上高地かみかうちや、白骨しらほねや、中房なかふさあたりに行つてゐれば、山も深いし、夏も至らないし、それこそ理想的の避暑地であるけれども、とても女はそこまで入つて行く事は出来なかつた。
女の温泉 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
白骨しらほねの湯は、人里離れて奥深いとは言いながら、やがて、わたしはここにも身を置くことはできなくなるでしょう。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
信州白骨しらほね温泉は乘鞍嶽北側の中腹、海拔五千尺ほどの處に在る。温泉宿が四軒、蕎麥屋そばやが二軒、荒物屋が一軒、合せて七軒だけでその山上の一部落をなしてをるのである。
白骨しらほね温泉へ行くのだそうで沢渡さわんどで下りた。子供も助かったであろうが自分もほっとした。
雨の上高地 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
梓川に近い白骨しらほね温泉に「ついとおし」という石橋だの、「鬼ヶ城」という鍾乳洞を見ることが出来るが、そんな小技巧は、山岳景に重きを加えるほどのものではないとして、石灰岩質の大山岳は
日本山岳景の特色 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
白骨しらほねの温泉は、昔白船しらふねの温泉といいました、それを後の人がシラホネと読むようになりました。それをまたハッコツとお読みになったのでは人が迷います」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
信濃の国、白骨しらほねの温泉——これをハッコツと読ませたのは、いつの頃、誰にはじまったものか知らん。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今ならばハッコツのおんから解いて、白骨しらほねの字をさぐるのはなんでもないことですけれども、その当時にあって、日本人の一人も、日本アルプスの名を知らないように
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お雪はやわらかな綿の湯につかりながら、白骨しらほねの名の起る白い湯槽ゆぶねの中を見ていました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なだらかな胆吹尾根から近江の湖面を眺めやった時——壺中の白骨しらほねの天地から時あって頭を出して、日本の脊梁せきりょうであるところの北アルプスの本場をお雪ちゃんは眺めあかしておりました。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
山地はかんの至ることも早く、白骨しらほねの温泉では、炬燵こたつを要するの時となりました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
信濃の国、白骨しらほねの温泉——
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)