白桃しろもも)” の例文
じょうじょうへ花売りにでる大原女おはらめが、散りこぼしていったのであろう、道のところどころに、連翹れんぎょうの花や、白桃しろもも小枝こえだが、牛車ぎゅうしゃのわだちにもひかれずに、おちている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白桃しろももの花だと思います。)とふと心付いて何の気もなしにいうと、顔が合うた。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
柳と柳の間に的皪てきれきと光るのは白桃しろももらしい。とんかたんとはたを織る音が聞える。とんかたんの絶間たえまから女のうたが、はああい、いようう——と水の上まで響く。何を唄うのやらいっこう分らぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どこぞで白桃しろももの花が流れるのをご覧になったら、私の体が谷川に沈んで、ちぎれちぎれになったことと思え、といってしおれながら、なお深切しんせつに、道はただこの谷川の流れに沿うて行きさえすれば
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)