疳違かんちがい)” の例文
結婚後今日こんにちに至るまでの間に、明らかな太陽に黒い斑点のできるように、思い違い疳違かんちがい痕迹こんせきで、すでにそこここよごれていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
正直な彼は主人の疳違かんちがいを腹の中でおこった。けれども怒る前にまず冷たい青大将あおだいしょうでも握らせられたような不気味さを覚えた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
守っておった令嬢はこいつ少しはきるなと疳違かんちがいをしたものと見えて「いつか夏目さんといっしょに皆でウィンブルドンへでも行ったらどうでしょう」
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なまじい、借金の催促に来たんじゃないなどと弁明すると、又平岡がその裏を行くのがしゃくだから、向うの疳違かんちがいは、疳違で構わないとして置いて、此方こっちは此方の歩を進める態度に出た。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は変に思いました。ことによると、私の疳違かんちがいかも知れないと考えたのです。しかし私がいつもの通りKの室を抜けようとして、襖を開けると、そこに二人はちゃんとすわっていました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
高柳君はのそりと疳違かんちがいをした客のように天幕のうちに這入はいった。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)