疑団ぎだん)” の例文
去れど過去十年においてすら、解きがたき疑団ぎだんを、来る一年のうちに晴らし去るは全く絶望ならざるにもせよ、殆んど覚束おぼつかなき限りなり。
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「あゝ藻西太郎は罪無きに相違なし」と呟き「罪なき者が何故に自ら白状したるや」と怪み、胸に此二個の疑団ぎだん闘い、微睡まどろみもせず夜を明しぬ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
疑団ぎだん多き事件に就き取調べ候処、著述家の中には斯様かやうなる事実の有り得べきことを疑ふ者少からず候へども
おれの胸に始めて疑団ぎだんきざしたのは、正にその白拍子たるお前の顔へ、偶然の一瞥いちべつを投げた時だ。お前は一体泣いてゐるのか、それとも亦笑つてゐるのか。猿よ。人間よりもより人間的な猿よ。
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
アヽ是にて疑団ぎだん氷解ひょうかいせり殺せしは支那人陳施寧殺されしは其弟の陳金起少も日本警察の関係に非ず唯念の為めに清国領事まで通知し領事庁にて調しらべたるに施寧は俄に店を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「しかるについ両三日前に至って、美学研究の際ふとその理由を発見したので多年の疑団ぎだんは一度に氷解。漆桶しっつうを抜くがごとく痛快なる悟りを得て歓天喜地かんてんきちの至境に達したのさ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
上篇(疑団ぎだん
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)