生煮なまにえ)” の例文
度外視して粗悪な無造作な手数のかからない生煮なまにえの物ばかり食べるから顔の光沢つやは内部から悪くなって青いような黒いような陰気な色になり
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
用意は周到であった其一段が甚だ宜しくって腐気と厭味と生煮なまにえとを離れたため、後の同路を辿るもののために先達となった体になったのでありましょう。
言語体の文章と浮雲 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ああ云ったらしかられるだろうと、びくびくして筆をるから、あの男は腹の中がかたまっておらん、理想が生煮なまにえだ、という弱点が書物の上に見えくように写っている
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
早く煮て、早く食つて、早く膳を片附けて了ひたい……それが姉さんの癖でしたから、私も學校の方へ氣がかれる時などは、生煮なまにえの物でも何でもサツサと掻込んで、成るべく早いことをやりました。
それを肉の上へかけたのがこのお料理です。しかし今度大原さんに差上げる時には生煮なまにえの硬いのに致しましょう
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
今の世にそういう事をおっしゃっても少々無理ですがしかし今年の夏富士へ登山した人の話しに富士山の上で御飯を炊くとグラグラ沸立にえたっていても御飯が生煮なまにえで何ほど長く煮てもよく出来ない
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
君のような人には大根でも人参にんじんでも何でもよく煮ないで生煮なまにえの硬い方がいいのだろう。そういう人の処へお登和をげても折角苦心して柔く煮た料理がかえって君の気に入らんようでは本意ほいないね。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)