生国魂いくたま)” の例文
といまなお記憶しているのは、その日が丁度生国魂いくたま神社の夏祭だったばかりでなく、私の著書が風俗壊乱という理由で発売禁止処分を
世相 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
知っての通り下寺町の東側のうしろには生国魂いくたま神社のある高台がそびえているので今いう急な坂路は寺の境内けいだいからその高台へつづく斜面しゃめんなのであるが
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
七月九日は生国魂いくたまの夏祭であつた。訓練は済んでゐた。私は十年振りにお詣りする相棒に新坊を選ばうと思つた。
木の都 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
そんな君枝の心は、しかし他吉は与り知らず、七月九日の生国魂いくたま神社の夏祭には、天婦羅屋の種吉といっしょに、お渡御わたりの人足に雇われて行くのである。
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
そんな君枝の心は、しかし他吉は与り知らず、七月九日の生国魂いくたま神社の夏祭には、お渡御わたりの人足に雇われて行くのである。重い鎧を着ると、三十銭上りの二円五十銭の日当だ。
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
北へ折れると生国魂いくたま神社、神社と仏閣を結ぶこの往来にはさすがに伝統の匂ひがかびのやうに漂うて仏師の店の「作家」とのみ書いた浮彫うきぼりの看板も依怙地いこぢなまでにここでは似合ひ
木の都 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
それは生国魂いくたま神社の境内の、さんがんでゐるといはれてこはくて近寄れなかつたくすの老木であつたり、北向八幡の境内の蓮池にはまつた時に濡れた着物を干した銀杏いちやうの木であつたり
木の都 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
灯明とうみょうが道から見える寺があったり、そしてその寺の白壁があったり、曲り角の間から生国魂いくたま神社の北門が見えたり、入口に地蔵をまつっている路地があったり、金灯籠を売る店があったり
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
げんにその日も——丁度その日は生国魂いくたま神社の夏祭で、表通りをお渡御わたりが通るらしく、枕太鼓の音や獅子舞の囃子の音が聴え、他所の子は皆一張羅の晴着を着せてもらい、お渡御わたりを見に行ったり
道なき道 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
石ヶ辻や生国魂いくたま方面へかけて行商します。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)