生効いきがい)” の例文
図書 針ばかり片割月かたわれづきの影もささず、下に向えば真の暗黒やみ。男が、足を踏みはずし、壇を転がり落ちまして、不具かたわになどなりましては、生効いきがいもないと存じます。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こういうところにいると、本でも読まんことには馬鹿になってしまうからね。僕は八百屋だけれど、読書のおかげ生効いきがいを感じている。貴女あなたも寂しい時は本を読みなさい。救われますよ。」
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
半年ばかりですたれたが、一種の物妖ぶつようとなえてかろう。持たないと、生効いきがいのないほど欲しかった。が樹島にはそれがなかった。それを、夢のように与えられたのである。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
最早、生効いきがいも無いと存じながら、死んだ女房の遺言でもめられぬ河豚ふぐを食べても死ねませぬは、更に一度、来月はじめの舞台が有って、おのれ、この度こそ、と思う、未練ばかりの故でござる。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)