瓦斯灯ガスとう)” の例文
旧字:瓦斯燈
電灯や瓦斯灯ガスとうの使用も、官省、銀行、会社、工場、商店、その他の人寄せ場に限られて、一般の住宅ではまだランプをとぼしていた時代である。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あるいは屋敷の門口もんぐちに立ててある瓦斯灯ガスとうではないかと思って見ていると、その火がゆらりゆらりと盆灯籠ぼんどうろうの秋風に揺られる具合に動いた。——瓦斯灯ではない。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
各室にはあたためた空気が流通するから、ストーヴもなければ蒸気もなし、無数の瓦斯灯ガスとうは室内廊下を照らして日の暮るゝを知らず、食堂には山海の珍味を並べて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
瓦斯灯ガスとうでも従来の魚尾形をした裸火はだんだんにすたれて、白熱瓦斯、すなわちウェルスバッハ・マントルに圧倒されて来た。今日では場末の荒物屋芋屋でもこれを使っている。
ランプのいろいろ (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
廃兵院は森道があまりに暗いので、電車通りから曲ってくる通行人のため、かねては自分の広告のために、自分の名を書き入れた瓦斯灯ガスとうを立てさせてくれるように願いでてある。
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
馬車道とか海岸通りなどに、青い瓦斯灯ガスとうの光が見られた頃にすぎない。
月のない坂を上って、瓦斯灯ガスとうに照らされた砂利を鳴らしながら潜戸くぐりどを開けた時、彼は今夜ここで安井に落ち合うような万一はまず起らないだろうと度胸をえた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
瓦斯灯ガスとうがひかり、洋服や洋傘やトンビが流行しても、詮ずるにそれは形容ばかりの進化であって、その鉄道にのる人、瓦斯灯に照される人、洋服をきる人、トンビをきる人
島原の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それから垣根の朝顔が、茶色に枯れて、引っ張るとがらがら鳴る時分、白いもやが一面に降りて、町のはずれの瓦斯灯ガスとうがちらちらすると思うとまたかねが鳴る。かんかん竹の奥でえて鳴る。
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)