牢記ろうき)” の例文
某は家にいたのに、きたり診することをがえんぜなかった。常吉はこの時父のために憂え、某のためにおしんで、心にこれを牢記ろうきしていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それが如何なる原因からということは、残念ながら今はまだ考え出せないが、ともかくも将来の弘い比較のためにこういう事実だけは牢記ろうきする必要がある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
新らしき床屋の番地を、心底深く牢記ろうきして呑み友達の家で、酒盃を挙ぐる間に忘れもせず、自家うちへ帰ってから、CとSの書損いを、ハガキで注意してやるのである。
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
……諸君……牢記ろうきして忘るる勿れ。神様というものは常に吾が○○以上に尊敬せねばならぬものである。その実例は日本外史をひもといてみれば直ぐにわかる事である。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
といった絶句の如きは今なお牢記ろうきして忘れぬものである。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
父母と共に崖の上の小家に移った時から、わたくしは香以の名を牢記ろうきしている。既にしてわたくしはこの家の旧主人小倉が後に名を是阿弥ぜあみと云ったことを知った。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)