煙草管きせる)” の例文
心配を輪に吹き/\吸て居し煙草管きせるを邪見至極に抛り出して忙はしく立迎へ、大層遅かつたではないか、と云ひつゝ背面うしろへ廻つて羽織を脱せ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
煙草管きせるをぽかんぽかんとたたいてばかり居るくせの、いくら大笑いに笑っても、苦笑にがわらいの様な表情しか出ないこのお爺さんが、かやの本当の祖父でないことは、このお爺さんが
かやの生立 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
父上は何とも応へ玉はで唯笑ひ玉ふ、弟はひたすら物食ふ、舟子は聞かざるが如く煙草管きせる啣みて空嘯けり。
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
格子こうし開くる響きさわやかなること常のごとく、お吉、今帰った、と元気よげに上り来たる夫の声を聞くより、心配を輪に吹き吹き吸うていし煙草管きせるを邪見至極にほうり出して忙わしく立ち迎え
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
もうざら/\ざらつと口の中へ打込む如く茶漬飯五六杯、早くも食ふて了つて出て来り、左様なら行つてまゐります、と肩ぐるみに頭をついと一ツ下げて煙草管きせるを収め、壺屋の煙草入りやうさげ三尺帯に
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
早くも食うてしまって出て来たり、さようなら行ってまいります、と肩ぐるみに頭をついと一ツげて煙草管きせるを収め、壺屋つぼや煙草入りょうさげ三尺帯に、さすがは気早き江戸ッ子気質かたぎ草履ぞうりつっかけ門口出づる
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)