無言むげん)” の例文
二人ふたりは半町程無言むげんまゝつてた。其間そのあひだ三四郎は始終美禰子の事を考へてゐる。此女は我儘にそだつたにちがひない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
不意の食事は此職業には有りがちなれば細君は騒ぎもせずくりやかたに退きて五分間とぬうち早や冷肉の膳を持出で二人の前に供したれば、二人は無言むげんの儘忙わしくべ初めしも
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
其内そのうちで野々宮さんは尤も多忙に見えた。部屋の入口に顔をした三四郎を、一寸ちよつと見て、無言むげんの儘近寄ちかよつてた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
二人ふたりは五六歩無言むげんであるいた。三四郎はうともして、二人ふたりあひだかつたうすい幕の様なものをやぶりたくなつた。然し何と云つたらやぶれるか、丸で分別がなかつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)