為難しにく)” の例文
一つには、九代目団十郎に対抗する為には、団十郎の為難しにくい所に出ねばならぬという事情があった。団十郎は、女形にはまず、極度に不向きであったからである。
役者の一生 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
三四日前に橋の上で逢つたきり、名も知り顔も知れど、口一ついたではなし、さればと言つて、乗客と言つては自分と其男と唯二人、隠るべきやうもないので、素知そしらぬ振も為難しにくい。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
昇なんぞは蚊蜻蛉かとんぼとも思ッていぬが、シカシあの時なま此方こっちから手出をしては益々向うの思う坪にはまッて玩弄がんろうされるばかりだシ、かつ婦人の前でも有ッたから、為難しにくい我慢もして遣ッたんだ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)