灰皿はいざら)” の例文
背中でよりかかっていた家具の上から、機械的に一つの灰皿はいざらをつかみ取って、口をききながら振り回した。秘書官の言ってる言葉が耳にはいった。
すると机の上の灰皿はいざらに、二三本吸いさしの金口きんぐちがたまった時、まず大儀そうに梯子段を登る音がして、それから誰か唐紙からかみの向うへ立止ったけはいがすると
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夜おそく笹村は蓋物を提げて下宿へかえって行った。そして部屋へ入ってランプをけると、机の上の灰皿はいざらのなかに、赤い印肉で雅号をしたM先生の小形の名刺が入れてあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
花魁おいらんの道具のような、長い煙管きせるを好きで、夏煙管とか言って自慢にしておりましたが、灰皿はいざらが焼けるほど煙草を吸っても、少しも熱くならないのが自慢だそうで、その辺にもたしか
コーヒー茶わんとか灰皿はいざらとかのこわれた代わりを買いに行っても、近ごろのものには、大概たまらなくいやだと思うような全く無益な装飾がしてあってどうにも買う気になれないのである。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
マッチと灰皿はいざらがのっている。椅子いすもある。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)