火遁かとん)” の例文
修錬の極致に至りますると、隠身避水へきすい火遁かとんの術などはいうまでもございませぬ、如意自在な法を施すことが出来るのだと申すことで。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
忍術には水遁すいとんの術、火遁かとんの術、木遁もくとんの術などいろいろありますが、小林君の発明したのは「書遁しょとんの術」とでもいうのでしょう。
怪奇四十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
火伏せのぎょうだって、本人は火遁かとんの術のつもりさ。する事も言うこともみんな法螺だ。——もっとも病気だけは不思議によくなおしたが、癒っても後で金を
霧隠れ雲隠れ、と申しても、つまりは火遁かとんの術、煙遁の術、薬品にて煙を急造し、目潰しを大袈裟おおげさにするまでじゃ。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
およそ忍術にんじゅつというものも夜陰やいんなればこそ鼠行そぎょうほうもおこなわれ、木あればこそ木遁もくとん、火あればこそ火遁かとんじゅつもやれようが、この白昼はくちゅう、この試合場しあいじょうのなかで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
火遁かとん水遁すいとん木遁もくとん金遁きんとんさては土遁どとんの合図もなしに、ふわりと現われ、ふわりと消える、白い雲よりなお身も軽い、白雲師匠の秘伝を受けて、受けて返すはへぼ弓、へぼ矢
猿飛佐助 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
眼が眩んだか、いい気味だ! エレキで作った無煙の火、アッハハハ驚いたか! 古風に云やア火遁かとんの術、このまま姿を隠したら、絶対に目つかる物じゃアねえ。……や、刀を
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
火事は倭文子を焼殺す為ではなくて、ただ悪魔の「火遁かとんの術」であったとしか思えなかった。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だますのは、いわば火遁かとんの術で、衆生済度しゅじょうさいどの方便だと思い込んでいらっしゃいました
火遁かとんだって、土遁どろどろどろ、すいとんだって、焼鳥だってお茶の子だわ。