火放ひつ)” の例文
「ははは。火放ひつびとが、火に追われて、を失うているような。……そのような老師を、正季もまた、何でお訪ねして行ったのか」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だって親分。あの日、仲吉が火放ひつけ道具を見つけて、あわてて焼いたじゃありませんか」
火放ひつけ強盗はおろかなこと、この屋敷から或る時は甲州へ向けて一手の人数が繰出される。或る時は下総、或る時は野州あたりへ繰出して、そこで大仕掛な一揆いっきの陰謀が持ち上る。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「並木の蔭へでも引込んでいろ。それでなくとも、六条の町の火放ひつけは、天城四郎あまぎのしろうのしわざだと、もう俺たちの噂が、火よりも迅く迫っている」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
火放ひつけ道具に使つた、松も、油も、綿も、周助の家には似寄りの品も見付かりません。
「え、火放ひつけが来ているのか」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わしが再びそんな魔道に落ちぬのも、養うて下さる御主人のおかげと常に思うていたら——その才謀さいぼう学識の人いちばい優れている御主人が、地獄の火放ひつけをなされようとは。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
落人おちゅうど追剥おいはぎ、あちゆる戦場稼いくさばかせぎ、火放ひつけ殺人誘拐かどわかし——やらない悪事はないくらいだからなあ
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この土地ばかりでなくひとたび戦禍せんかに見舞われたあとには、村にも町にもたくさんな家なき子が出来、それが忽ち、野盗の手先や、寺荒しや、火放ひつとんびや、戦後の死骸がしなどになって
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いったい何をして捕まって来たのだ。火放ひつけか、窃盗せっとうか、空巣あきすねらいか」
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こよいの火放ひつけは、おのれの仕業しわざか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ははあ。火放ひつけですか」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)