うか)” の例文
破れた硝子ガラスに冷い日光ひかげが射して、硝子は銅のやうな鈍い光を放ツてゐた。一平は尚だ窓から顏を出して、風早學士の方を見詰めて皮肉な微笑をうかべてゐた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そして、彼女はロシア語が出来るのに、ひとことも口をきかないで、ちょっとした身ぶりで、それを差しあげますという意味を示し、その瞬間ちらりと何とも云えない笑いを口辺にうかべた。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
愛嬌あいきょうのある丸顔にみをうかべて、「そうけちなことを言いなさんな。一生に一度じゃないか。こんな物を倹約したからって、何ほども違うものじゃありゃしない。第一見すぼらしくていけないよ。」
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)