溝際どぶぎわ)” の例文
灯影のまばらなその町へ来ると、急に話をめて、女から少し離れて溝際どぶぎわをあるいていた浅井の足がふと一軒の出窓の前で止った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
実際私は下谷浅草本所深川あたりの古寺の多い溝際どぶぎわの町を通る度々、見るもの聞くものから幾多の教訓と感慨とをさずけられるか知れない。
唯濹東の裏町、蚊のわめく溝際どぶぎわの家でしたしんだばかり。一たび別れてしまえば生涯相逢うべき機会も手段もない間柄である。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お庄は一人で暗い外へ出ると、温かい湯のにおいのする溝際どぶぎわについて、ぐんぐん歩いて行ったが、どこへ行っても同じような家と町ばかりであった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
わたくしは散策の方面を隅田河の東に替え、溝際どぶぎわの家に住んでいるお雪という女をたずねてやすむことにした。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
わたくしの忍んで通う溝際どぶぎわの家が寺島町七丁目六十何番地に在ることは既にしるした。この番地のあたりはこの盛場では西北のすみに寄ったところで、目貫めぬきの場所ではない。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
清岡は君江が石にでもつまずいて、そのために急に自分の手を握ったとでも思ったらしく、「どうしたんだ。」と言いながら、往来の人目をはばかって溝際どぶぎわの方へ少し身をけた。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)