湯河原ゆがわら)” の例文
それは一つの大きい謎であった。司令部内で知っていたのは、司令官の別府べっぷ大将と、その信頼すべき副官の湯河原ゆがわら中佐とだけであった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
安藤は手のつけようがないから、ともかくもと湯河原ゆがわらへつれだした。そうして自分もいっしょにひと月もおってなぐさめた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
人力車から落されて少々怪我をいたし、打撲うちみで悩みますから、或人の指図で相州そうしゅう足柄下郡あしがらしもごおり湯河原ゆがわら温泉へ湯治とうじに参り、温泉宿伊藤周造いとうしゅうぞう方に逗留中
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
水沢さんの継子つぎこさんが、金曜日の晩にわたくしの宅へおいでになりまして、明後日あさっての日曜日に湯河原ゆがわらへ行かないかと誘つて下すつたのでございます。
「それよりも私温泉へ行こうと思うの。湯河原ゆがわらどう?」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
湯河原ゆがわら。下車。
秋風記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
高級副官、湯河原ゆがわら中佐の円い顔が、あらわれた。この室内の光景を見ると、おどろくかと思いの外、ニヤリと、薄ら笑いを、口辺に浮べたのだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
市内の狭い庭園は薄を栽えるに適しないので、わたしは箱根や湯河原ゆがわらなどから持ち来たって移植したが、いずれも年々に痩せて行くばかりであった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
熱海あたみ修善寺しゅぜんじ箱根はこねなどは古い温泉場でございますが、近年は流行りゅうこういたして、また塩原しおばらの温泉が出来、あるい湯河原ゆがわらでございますの、又は上州に名高い草津くさつの温泉などがございます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「これは、ますます、ひどいな」そう云ったのは、側の湯河原ゆがわら中佐だった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
重兵衛 あなたは湯河原ゆがわらの温泉を御存じでしょう。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)