温突オンドル)” の例文
李朝の代表的建築である康寧殿と交泰殿とは既に他に移転せられ変形せられ、今はただ温突オンドルの煙出しのみが小山に沿うて淋しくたたずんでいる。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
それはがさがさと物音をたてて吹っ飛び温突オンドルの上で揺れている。他ならぬ、泥まみれになった桃の枝だったのだ。
天馬 (新字新仮名) / 金史良(著)
温突オンドルの温もりが、まだ身体から抜け切れないうちに、慣れない雪道を歩いて身体が温まり初めたからであった。
眼を開く (新字新仮名) / 夢野久作(著)
家の中は全部油紙を敷詰めた温突オンドルになっていて、急に温い気がむっと襲った。中には七八人の朝鮮人が煙草を吸いながら話し合っていたが、此方を向くと一斉に挨拶をした。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
温突オンドルの上のやうなものだ
大体朝鮮ではお寺でも民家でも宮殿でも、温突オンドル部屋以外の床や椽側えんがわの板の張り方は皆一様で構造的で非常に美しい。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その枯れ残った秋草の花の身に泌むような色彩を見下す寝室の窓の前に机を据え、米や塩や、乾物、缶詰なぞいう食料品を多量に運び込み、温突オンドル用の薪を山積して
眼を開く (新字新仮名) / 夢野久作(著)
所が突然爺はその場にがくんと跪いて頭を温突オンドルにつけ
土城廊 (新字新仮名) / 金史良(著)
幸にも紙業組合理事李廷善氏の案内を受けて紙漉かみすきの仕事場を見ることが出来た。場所は上蜈里と言い、主として温突オンドル用の原紙を作る。その作業場は見ものであった。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
山の麓の村落から谿谷の間の岨道そばみちを、一里ばかり上った処に在る或る富豪の別荘で、荒れ果てた西洋風の花壇や、温突オンドル仕掛にした立派な浴室附の寝室が在ったが、私は
眼を開く (新字新仮名) / 夢野久作(著)
内地の古老から話に聞く寺小屋より、もう一時代前のものとさえ思われる。温突オンドル部屋二た間にあふれるほどつまった小童が、あぐらをかいて身体をゆすぶって大声を挙げながら素読そどくの雑唱をやる。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)