清浄きれい)” の例文
旧字:清淨
知らぬうちこそ清浄きれいだが、だんだんあとからいろいろなことが分ってくると、この先まだまだ厭な思いをしなければならぬ。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
それからと言ふものは、雀は清浄きれいな米や粟を、啄木鳥は、腐れた木から虫を探して喰べるやうになりました。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
そういうと、いかにも、この社会せけんというものが清浄きれいに聞えるが、どこにそんな清い社会せけんがあったか。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とにかく、路傍みちばただし、ほこりがしている。裏の崖境がけざかいには、清浄きれいなのが沢山あるから、御休息かたがた。で、ものの言いぶりと人のいい顔色かおつきが、気をかせなければ、遠慮もさせなかった。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんな言葉を奥さんとかわした後、先生は高瀬と一緒に子供の遊んでいる縁側を通り、自分の部屋へ行った。庭の花畠に接した閑静な居間だ。そこだけは先生の趣味で清浄きれいに飾り片附けてある。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
呆然ぼんやり縁側に立って、遠くの方を見ると、晩秋あきの空は見上げるように高く、清浄きれいに晴れ渡って、世間が静かで、ひいやりと、自然ひとりでに好い気持がして来る。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「可いじゃないか。支那人や癩病かったいと違って君だと清浄きれいに素姓が分っているから。……まあ構わないさ!」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
あゝいう境遇にいる女性おんなだから、何うせ清浄きれいなものであろう筈も無いのだが、何につけ事物を善く美しゅう、真個ほんとのように思い込み勝ちな自分は、あのお宮が最初からそう思われてならなかった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)