深淵ふかみ)” の例文
住職も弟子たちもみんな悪い人間ではなかったのですが、いったん悪い方へ踏み込むと、もう抜き差しが出来なくなって、だんだん深淵ふかみに落ちて行く。
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今後のことは今後の處しかたも有るものをと、せん方なしの斷念あきらめに、お辰がいふ嬰兒さまの本色か、うまうま深淵ふかみに引入れられしをくやみながら、手玉に取られて手も足も出ぬやうに成りぬ
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
瑠璃るり深淵ふかみに沈んでは、真珠の貝を探り取る。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
若し真実まことの人間とすれば、右の如き大雨と云い夜中と云い、ことのドンドンの如き急流の深淵ふかみに於て、とても無事に浮び上れよう筈も無し、さりとてその死体の見当らぬも不思議
河童小僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)