淡白きさく)” の例文
かと思へば、些細の事にも其齒を露出むきだしにして淡白きさくらしく笑ふ。よく物を言ふ眼が間斷なく働いて、解けば手に餘る程の髮は黒い。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
志郎は淡白きさくな軍人気質かたぎ、信吾を除いては誰とも仲が好い。緩々ゆるゆる話をするなんかは大嫌ひで、毎日昌作と共に川にゆく、吉野とも親んだ。——
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
村の人達は、富江を淡白きさくな、さばけた、面白いひととして心置なく待遇あしらつてゐる。殊にも小川の母——お柳にはお贔負きにいりで、よくそのいへにも出入する。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
思ふ事は何でも言ふといつた樣な淡白きさくな質で、時々間違つた事を喋つてはみんなに笑はれて、ケロリとしてゐる兒であつた。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
思ふ事は何でも言ふといつた様な淡白きさくたちで、時々間違つた事を喋つてはみんなに笑はれて、ケロリとしてゐる児であつた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
肉の緊つた青白い細面の、醜い顔ではないが、少し反歯そつぱなのを隠さうとする様に薄い唇をすぼめてゐる。かと思へば、些細の事にも其歯を露出むきだしにして淡白きさくらしく笑ふ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
一時間許りで源助は歸つて來たが、先樣の奧樣は淡白きさくな人で、お八重を見るや否や、これぢや水道の水を半年もつかふと、大した美人になると言つた事などを語つた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
一時間許りで源助は帰つて来たが、先様の奥様は淡白きさくな人で、お八重を見るや否や、これぢや水道の水を半年もつかふと、大した美人になると言つた事などを語つた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
止宿人おきやくの方でも、根が愚鈍な淡白きさく者だけに面白がつて盛んに揶揄からかふ。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
極く淡白きさくに見せて居たが、何も云はねば云はぬにつけて、私は又此人の頭腦あたまがモウ餘程乾涸ひからびて居て、漢文句調の幼稚な文章しか書けぬ事を知つて居るので、それとなく腹の中でフフンと云つて居る。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)