浪六なみろく)” の例文
「文章談をしたのよ。」とそれから間もなくその風呂敷包を開いて一つの書物を取り出して見せたのは浪六なみろくの出世小説『三日月みかづき』であった。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
されど浪六なみろく、弦斎の作を読みて国民的性情の満足を感ずるの徒は浅薄なる俗人的理想をよろこぶの徒か、然らざれば過去の理想に満足するの徒にはあらざるか。
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
とあるは、柳村、びん博士のことである。その他に一葉の周囲の男性は、戸川秋骨とがわしゅうこつ、島崎藤村、星野天知てんち、関如来にょらい正直正太夫しょうじきしょうだゆう、村上浪六なみろくの諸氏が足近かった。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
また、医学の書生の中にもすこしも医学の勉強をせず、当時雑書を背負って廻っていた貸本屋の手から浪六なみろくもの、涙香るいこうもの等を借りて朝夕そればかり読んでいるというのもいた。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
只、汚ないぼろぼろの長い板塀にかこまれている。昨夜一晩で書きあげた鳥追い女と云う原稿が金に替るとは思われなくなってくる。浪六なみろくさんのようなものを書くにはよほど縁の遠い話だ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「ほら、浪六なみろくね、知っているだろう。つまりああいうものさ。」
朴歯の下駄 (新字新仮名) / 小山清(著)
村上浪六なみろく等の文学をいうのであります——に追随するためにはまず西鶴を学ぶ必要があり、西鶴を学ぶためにはぜひとも俳句を学んでおく必要があるという説に従ったのに過ぎないのでありました。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)