流行病はやりやまい)” の例文
ハッと気が付いて真面目になったところでコロリ流行病はやりやまいで命を取られたので、家督と一緒に借金証文まで紋太郎の所へ転げ込んだ始末。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「輪飾りを引っくり返したり、障子を裏返しにすると、何かの禁呪まじないになるでしょうか。今年は流行病はやりやまいがありそうだからとか何とか」
七八月の炎熱はかうして平原の到るところの街々に激しい流行病はやりやまいを仲介し、日ごとに夕焼の赤い反照を浴びせかけるのである。
水郷柳河 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
(山したの方には大分流行病はやりやまいがございますが、この水はなにから、辻の方から流れて来るのではありませんか。)
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
踊りの陣にまじる人は、武士と町人の階級なく、若い娘と後家の恥らいなく、老人も青年も、百姓も船夫ふなこも、流行病はやりやまいにかかったように、疲れるまで踊りぬく。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし彼女の母は公家に奉公したもので、おなじ公家侍のなにがしと夫婦になって、お万とお千という娘ふたりを生んだのだが、六年ほど前に夫婦は流行病はやりやまいで殆ど同時に死んだ。
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私は或る一つの悲しいいたましい『流行病はやりやまい』だって云うんですよほんとうに。
千世子(三) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)