活計かっけい)” の例文
「実に気の毒な事をしたもんだ。定めし転任先をさがす間活計かっけいに困ったろうと思ってね。今度逢ったらおおいに謝罪の意を表するつもりだ」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さて、その色にも活計かっけいにも、寐起ねおきにも夜昼の区別のない、迷晦朦朧めいかいもうろうとして黄昏男と言われても、江戸児えどッこだ、大気たいきなもので、手ぶらで柳橋の館——いや館は上方——何とかへ推参する。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
権利をことにし、骨肉の縁を異にし、貧富ひんぷを異にし、教育を異にし、理財りざい活計かっけいおもむきを異にし、風俗ふうぞく習慣しゅうかんを異にする者なれば、おのずからまたその栄誉の所在しょざいも異なり、利害の所関しょかんも異ならざるを得ず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
釣や猟をしなくっちゃ活計かっけいがたたないなら格別だが、何不足なくくらしている上に、生き物を殺さなくっちゃ寝られないなんて贅沢ぜいたくな話だ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今の余のように生き延びた自分を祝い、遠くく他人を悲しみ、友をなつかしみ敵をにくんで、内輪だけの活計かっけいに甘んじて得意にその日を渡る訳には行くまい。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれども詩で染めた色彩と、散文で行く活計かっけいとはだいぶ一致しないところもあって、実際を云うと、これがために下宿を変えて落ちついた方が楽だと思うほど彼は洋杖にわざわいされていなかったのである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)