洋妾らしゃめん)” の例文
この界隈では、すこし綺麗な女のひとだと思うと、たいがいが洋妾らしゃめんと呼ばれる婦人か、異人館に雇われているアマさん(家政婦)だった。
すると聯想れんそうがたちまち伴侶つれの方に移って、女が旦那だんなから買ってもらったかわの手袋を穿めている洋妾らしゃめんのように思われた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
妹娘はその後に洋妾らしゃめんになったとかいう噂ですが、ほんとうだかどうだか知りません。舐め筆ではやり出した店が舐め筆でつぶれたのも、なにかの因縁でしょう
半七捕物帳:22 筆屋の娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
成る程、するとこの女は外国人の細君だったのか、そう云われれば看護婦よりも洋妾らしゃめんタイプだと思いながら、私はいよいよ固くなってお辞儀をするばかりでした。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
何でも夫人の前身は神戸あたりの洋妾らしゃめんだと云う事、一時は三遊亭円暁さんゆうていえんぎょう男妾おとこめかけにしていたと云う事、その頃は夫人の全盛時代で金の指環ばかり六つもめていたと云う事
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
錠をおろしてある寝室へ入って、深々した軟かい、二人寝の寝台の上へもかされた。よく薬種屋の方へ遊びに来ている、お島さんという神奈川在うまれの丸い顔の女が、この外人の洋妾らしゃめんであった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「……この男はその洋妾らしゃめん瑠璃子の情夫だったのですか」
童貞 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
また、かれが商館に勤めているのは事実であるが、姓名を変えているので判らないのである。一緒に連れ立っていたのは外国人の洋妾らしゃめんで、背中に一面の刺青ほりもののある女であるという者もあった。
平造とお鶴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)