沙汰止さたや)” の例文
そのなかから流行はやりのフロツクコートも一着こしらへたが、出発間際になつて風邪を引込んで、延々のびのびになつてゐるうち、つい沙汰止さたやみになつてしまつた。
それに又いろ/\差障さしさはりもあつて、急に運びさうもなかつた。奧方の御他界で、それも暫らくは沙汰止さたやみであらう
それでももう締切にぎりぎりとかで二等の最後の切符がやっとしか手に入らなかった。ところを、研究会の同勢が沙汰止さたやみになって、庄亮君一人となった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
こういう書面の内容を見て、秀吉は、秀長の意をりょうとしたか、或いは、初めから秀長をして発奮させるためにやったことか、とにかく、秀吉自身の出馬は、沙汰止さたやみになった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは参内の途中、二人ふたり攘夷家じょういかのあらわれた出来事のために沙汰止さたやみとなった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この縁談は沙汰止さたやみとなりにき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
浅井家をおこそうという話もあったようですが、いつの間にやらそれも沙汰止さたやみになったということです。
鴈治郎と歌右衛門とが大阪での顔合せが、梅玉父子ばいぎよくおやこ意地張いぢばりから急に沙汰止さたやみになつたので、いつものやうに大阪俳優の大顔寄せといふ事になり、旅興行の延若えんじやくへその旨を通じると、延若は承知しない。
沙汰止さたやみ——)ということになってしまった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
淺井家をおこさうといふ話もあつたやうですが、何時の間にやらそれも沙汰止さたやみになつたといふことです。
見張っているわけはお判りでしょうね。この上、人さらいなどがあると、これほどの善根も沙汰止さたやみにならないとも限りません。そうなると第一貧乏人が可哀相じゃありませんか
「それにもワケが御座います。お銀とお舟の身許をもつとよく調べるために、今日は朝早く小田原と八王子へ人をやることになつて居りました。さわぎが始まつて、そのまゝ沙汰止さたやみになりましたが」
これは番頭の祿兵衞が強硬きやうかうに反對して、沙汰止さたやみになりました。
「ハッハッ、これで、八の嫁話も当分沙汰止さたやみか」