沙山すなやま)” の例文
最初彼等は、海岸を真っすぐに、材木座の方へ行くのだろうかと思われましたが、中途でだんだん左へ曲って、街の方へ出る沙山すなやまを越えたようでした。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
さながらしんとして幾千じんの淵に臨んだ気持がする。私は驚きと怖れに魂消たまげて、覚えず激烈な臭いのため顔を背けた。町や、沙山すなやまは目の下になっている。
暗い空 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「かしこの藁屋わらやには、さる有験うげんの隠者が住居すまひ致いて居ると聞いた。まづあの屋根の上に下らうずる。」とあつて、「れぷろぼす」を小脇に抱いたまま、とある沙山すなやま陰のあばら家のむね
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
電信柱は遠くまでつづいた。折々おりおり冬木立に風が当って、枝が鳴るかと思うと頭の上の電線が呻った。彼方に沙山すなやまが見える。急いで来ると、やがて沙山へ着いた。沙山を越えると町だ。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)