沈々ちんちん)” の例文
もがく玄女と猪右衛門を担いで庭師の去った後は、月光が木の葉を照すばかり、沈々ちんちんとして静かである。が、次の瞬間には、驚くべき事件が行なわれた。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やが嫁入よめいり行列は、沈々ちんちん黙々もくもくとして黒い人影は菜の花の中を、物の半町はんちょうも進んだころおい、今まで晴れていた四月の紫空むらさきぞらにわかに曇って、日があきらかに射していながら絹糸のような細い雨が
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
ばさと木の葉の落ちる音にも胸とどろかせ、ただ黒暗々たる無人の密林盆地のうちに天も地も沈々ちんちんと更けゆく中に、寂寞身を切るような阿弗利加アフリカ奥地の奇異な一夜を明かしたことであったが
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)