江口えぐち)” の例文
飢えて死ぬか。それを思うと、ほんに悲しい。きのうも隣りの陶器師すえものつくりの婆どのが見えられて、いっそ江口えぐちとやらの遊女に身を沈めてはどうじゃ。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
なんの、都の白拍子にも、江口えぐち神崎かんざき遊君きみたちにも、くらぶべきは無いといわるる御内方おんうちかたを、ちょっと、招かれれば、みな、気がすむというものだ。
江口えぐち川尻かわじりの船の家に老い、さては野上のがみ坂本さかもと路次ろじおおがさを立てて、朗かなる歌の声を東西の旅人に送っていた者は、最初からそういう生活様式を持って、日本へ入って来た人々のすえでもあるように
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
江口えぐちびとやなうちわたせその簗に鮎のかからばなますつくらな
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
一面に月の江口えぐちの舞台かな
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
おれの考えでは、いつも、同じ所で、色気もなく、飲んでいても、きょくがない。ひとつ、純友の帰国を送りながら、一しょに、淀川を舟で下り、江口えぐちの遊女をあいてに、盛んな送別会を
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの婆め、とうとう藻をそそのかして江口えぐちとやらへ誘い出したのではあるまいかと、彼は急におどりあがって又一散に駈け出した。藻のかどの柿の木を見た頃には、彼はもう疲れて歩かれなくなった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)