いささか)” の例文
片隅なる盲翁めくらおやじは、いささかも悩める気色はあらざれども、話相手もあらで無聊ぶりょうえざる身を同じ枕に倒して、時々南無仏なむぶつ南無仏なむぶつと小声に唱名しょうみょうせり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼のいささかづる色無きを見て、二人は心陰こころひそかあきれぬ。あなどりし風早もかくてはくみやすからず思へるなるべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)