殷盛いんせい)” の例文
それにしても、彼は安土城の高閣こうかくから、城下の殷盛いんせいを見るたびに、文化というものの正体をいつも不審に考えずにいられなかった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此処の市は殷盛いんせいなものであった。場所も大きく、市の立て方も昔風で、集る者も売る品も純粋で混り気の少いものであった。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
当時の殷盛いんせいをうかべた地表のさまは、背後の山の姿や、山裾の流れの落ち消えた田の中に、点点と島のようにき残っている丘陵の高まりで窺われる。
売る者があっても買うものがなければ事はむわけである。図書出版の殷盛いんせいは購求者の多きをしょうするもの。これ今の世において見る不可思議中の不可思議ではないか。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
幕府のあつた殷盛いんせいな表情が、石垣や樹の切株や、道路の平担な自然さに今も明瞭に現はれてゐる。
琵琶湖 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
この山間城下の殷盛いんせいになずみ、竹山城の壊滅と共に、郷土から姿を消したわけである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現在よりは遥かに殷盛いんせいな小都会であったのではないかと思われる。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして聚落じゅらく殷盛いんせいな炊煙が朝夕に立ち昇っていたものと思われる。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)