歩武ほぶ)” の例文
尊氏の博多入りは、歩武ほぶ堂々な入市ではない。途々、降参人を入れ、掃蕩そうとうの余勢を駆ッて、いつかちまたに乱入していたのである。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
如何なる方法に依って研究の歩武ほぶを進めて来たか、且つ又、その研究によって摘発されたる第二回の発作の内容の説明が、如何に悽惨、痛烈、絢爛けんらん、奇怪にして、且つ
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そしてまた一杯飲んだ。そしてはしなくまなこを自分の方へ転じたと思うと、洋杯コップを手にしたまゝ自分の方へ大股おおまたで歩いて来る、其歩武ほぶの気力ある様は以前の様子と全然まるで違うて居た。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
において、ミケルアンゼロに及ばず、たくみなる事ラフハエルに譲る事ありとも、芸術家たるの人格において、古今の大家と歩武ほぶひとしゅうして、ごうゆずるところを見出し得ない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
権威ある道徳律として存在できなくなるのはやむをえない上に、社会組織がだんだん変化して余儀なく個人主義が発展の歩武ほぶを進めてくるならばなおさら打撃をこうむるのは明かであります。
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
師直の凱旋軍は、誇りを歩武ほぶに鳴らして入洛した。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それへ返してゆく歩武ほぶに示していた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)