正銘しょうめい)” の例文
表でこの騒ぎを知るや知らずや、今度は正銘しょうめい捕方とりかたが五人、比較的に穏かな御用の掛声で、ドヤドヤと裏口からこの家へ押込んで来た。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
事件その物が不名誉であるならば、めて逆上なりとも、正銘しょうめいの逆上であって、決して人に劣るものでないと云う事を明かにしておきたい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
正銘しょうめいまがい無しの物でも、自分の手の届くところまで、引き下げたものにして考えて居なければ気がすまなかった。
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「ところが、これは大丈夫、正銘しょうめいまがいなしの折紙付きという代物しろものです。宗匠、まあ御覧ください」
半七捕物帳:36 冬の金魚 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それはうまいちちを——正銘しょうめいのクリームを出すいい雌牛めうしを持っていた——しかもそれはほとんど物を食べなかった。五十エクー出せばその雌牛はわたしの手にはいるはずであった。
正真正銘しょうめいの明智小五郎にちがいないのです。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかし、盲目であることに正銘しょうめい偽りのないのは、そのかおつきでも、足どりでも、また杖のつきぶりでも、充分に信用ができるのであります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ここに至って神尾主膳は、正銘しょうめいの酒乱になってしまったようであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)