櫺子窓れんじまど)” の例文
高い櫺子窓れんじまどである。そこへ人の顔が現われたのだ。イヤ、正確には、現れたような気がしたのだ。それはまことに、おだやかでない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
顎十郎が組屋敷の吟味部屋ぎんみべやへ入って行くと、叔父の庄兵衛とひょろ松が、あけはなした櫺子窓れんじまどの下で、上きげんの高声で話し合いながら、笑っていた。
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
折々吹く風がバタリと窓のすだれうごかすと、その間から狭い路地を隔てて向側むかいがわの家の同じような二階の櫺子窓れんじまどが見える。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ところどころ風通しの櫺子窓れんじまどもついているが、一つ一つ内側からすだれが下げてあるので、中の様子は見られない。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
其所そこから直角に折れ曲って、河の見える櫺子窓れんじまどの際までに、人の数が何人いたか、机の数が幾脚あったか、健三の記憶はたしかにそれを彼に語り得なかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
座敷の櫺子窓れんじまどをあけて外を眺めていた綾鶴が、中のの方へ向いて声をかけた。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すると表に櫺子窓れんじまどの付いた小さなうち朧気おぼろげに彼の前にあらわれた。門のないその宅は裏通りらしい町の中にあった。町は細長かった。そうして右にも左にも折れ曲っていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
当惑とうわく顔を突き合わせていると、ちょうど湯殿のうらで、櫺子窓れんじまどの隙間からほのぼのと湯気ゆげが逃げて誰か入浴はいっているようす、ポシャリ、ポシャリ、忍びやかに湯を使う音がする。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かと、言ひつ、立つて櫺子窓れんじまど、障子ほそめに引きあけて
雪の日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
言ひつつ立つて櫺子窓れんじまど、 障子ほそめに引きあけて
雪の日 (新字新仮名) / 永井荷風(著)