櫓臍ろべそ)” の例文
藁箒わらぼうきを取って、櫓臍ろべそ湿しめりをくれた宅助、ツーウと半町ほど流れにまかした所から、向う河岸がし春日出かすがでの、宏大なやかたいらかをグッと睨んで
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、かいを取って、漕ぎ出そうとすると、肝心な櫓臍ろべそがないことが分かった。おどろいてもう一つの舟に乗り替えてみた。が、その舟も同じだった。あわてた。
船医の立場 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
伝馬船は、櫓臍ろべそをかすかにキイキイ鳴らしながら、港外に出る。はるか前方に、燈台が明滅している。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
ギイ、ギイ、と髪切り虫の啼くように櫓臍ろべその音が、そよとも波のない暗い海を帰りみちについている……
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
キイ、キイと、櫓臍ろべそが泣く。二隻の伝馬船は、十間ほどの間隔をおいて、力一杯、港内へ向かって漕がれている。その中間に、やがて、追いついて来たパナマ丸が、舳を乗り入れて来た。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
今、脚の高い両国橋の暗い陰から、ギイッ、ギイッと櫓臍ろべそを鳴らしてこぎのぼって来ましたが、代地手前の河心からへさきを左に曲げて、神田川の口へはいろうとした所で
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「待っておくんなさい、櫓臍ろべそがはずれてしまったんで」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)