檳榔子びんろうじ)” の例文
箱車を押す半裸体の馬来人マレイじん檳榔子びんろうじの実をんでいて、血の色のつばをちゅっちゅと枕木に吐いた。護謨園ゴムえんの事務所に着いた。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
近頃檳榔子びんろうじの炭を使って極寒まで冷した空気を吸わせ真空を作る事も発明された。
歳時記新註 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
他は盲縞めくらじま股引ももひき腹掛はらがけに、唐桟とうざん半纏はんてん着て、茶ヅックの深靴ふかぐつ穿うがち、衿巻の頬冠ほほかぶり鳥撃帽子とりうちぼうしを頂きて、六角に削成けずりなしたる檳榔子びんろうじの逞きステッキを引抱ひんだき、いづれも身材みのたけ貫一よりは低けれど
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
椰子やし檳榔子びんろうじの生え茂つた山に添つて、城のやうに築上つきあげた、煉瓦造れんがづくりがづらりと並んで、矢間やざまを切つた黒い窓から、いしびやの口がづん、と出て、幾つも幾つも仰向あおむけに、星をまうとして居るのよ……
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)