機翼きよく)” の例文
愛宕山あたごやまの上では、暗黒の中に、高射砲が鳴りつづいていた。照空灯が、水色の暈光うんこうをサッと上空にげると、そこには、必ず敵機の機翼きよくが光っていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
横須賀航空隊のN大尉とS中尉は、それぞれ陸上偵察機を操縦してA飛行場に向けて長距離飛行を行い、目的地に到著とうちゃくして機翼きよくをやすめるひまもなく、直ちに帰還の途についた。
空中に消えた兵曹 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
西にかたむいた太陽は、密雲みつうんの蔭にスッカリ隠れてしまったり、そうかと思うと急にその切れ目から顔を現わして、真赤な光線を、機翼きよくに叩きつけるのだった。丁度、そのときだった。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
射墜うちおとされた敵機の周囲には、激しいいかりに燃えあがった市民が蝟集いしゅうして、プロペラを折り、機翼きよくを裂き、それにもあきたらず、機の下敷したじきになっている搭乗将校とうじょうしょうこうの死体を引張りだすと、ワッとわめいて
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)